【コラム】:70歳,女性,主婦が死亡した場合
70歳,女性,主婦が交通事故により死亡した場合,どのような損害賠償の種類が請求できるのかを,説明させていただきます。
(1)治療費
救命治療などに要した治療費を請求できます。
(2)葬儀関係費
死亡事故がなくても将来的にはいずれ必要になってくるため,全額ではなく150万円程度が認定されることが多いです。
(3)死亡慰謝料
2500万円ほどで認定されることが多いです。
(4)逸失利益
死亡逸失利益は,①基礎収入×(1-②生活費控除率)×③就労可能年数によるライプニッツ係数(年金であれば平均余命までの年数に対応するライプニッツ係数)で算定します。
年金がある場合は,Ⅰ家事ができる期間,Ⅱ年金のみの期間に分類して算定します。
Ⅰ家事ができる期間
①基礎収入
家事従事者の年収は,女性労働者の学歴計・年齢計の平均賃金を参考にします。平成27年賃金センサスでは,372万7100円です。
②生活費控除率
30%です。
③就労可能年数によるライプニッツ係数
就労可能年数は原則として67歳までの年数です。ただし,67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者については,平均余命の2分の1を就労可能年数とします。女性70歳の平均余命は,19.92です(平成27年簡易生命表)。就労可能年数は9年間です。
9年間のライプニッツ係数 7.1078
以上より,Ⅰ家事ができる期間の逸失利益は,①372万7100円×(1-②0.3)×③7.1078=1854万4036円です。
Ⅱ年金のみの期間
①基礎収入
基礎収入の対象となる年金は,被害者側が保険料を拠出していた年金です。国民年金,厚生年金等の老齢年金,障害年金等は逸失利益の対象になります。一方で,遺族年金等,被害者側が保険料を拠出していないものは逸失利益の対象となりません。
基礎収入の対象となる厚生年金等が200万円であれば,基礎収入は200万円です。
②生活費控除率
年金は一般的に少額であって生活費を支払って余りが出るような性格ではないため,年金以外の逸失利益に比べて生活費控除率は高く認定される傾向にあります。多くの裁判例は,生活費控除率を50%と認定しています。
③平均余命までの年数に対応するライプニッツ係数
女性70歳の平均余命は,19.92です(平成27年簡易生命表)。算定にあたっては,Ⅰ家事ができる期間の9年間を控除する必要があります。
12.0853(19年間のライプニッツ係数)-7.1078(9年間のライプニッツ係数)=4.9775
以上より,Ⅱ年金のみの期間の逸失利益は,①200万円×(1-②0.5)×③4.9775=497万7500円です。
したがって,逸失利益は,1854万4036円(Ⅰ家事ができる期間)+497万7500円(Ⅱ年金のみの期間)=2352万1536円です。
交通死亡事故は賠償額が大きくなるため,弁護士の腕次第で,賠償額に数千万円の違いが生じることがあります。
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