【コラム】:60歳,男性,会社員,大卒,一家の大黒柱が死亡した場合

2017-01-15

60歳,男性,会社員,大卒,一家の大黒柱(被扶養者妻)が交通事故により死亡した場合,どのような損害賠償の種類が請求できるのかを,説明させていただきます。

(1)治療費
   救命治療などに要した治療費を請求できます。

(2)葬儀関係費
   死亡事故がなくても将来的にはいずれ必要になってくるため,全額ではなく150万円程度が認定されることが多いです。

(3)死亡慰謝料
      2800万円ほどで認定されることが多いです。

(4)逸失利益
       死亡逸失利益は,①基礎収入×(1-②生活費控除率)×③就労可能年数によるライプニッツ係数で算定します。
        ①基礎収入
           ⅰ給与所得者の基礎収入は,原則として事故前年の収入額とします。60歳,男性,会社員,大卒の年収が700万円であれば,基礎収入は700万円です。
           ⅱ65歳までは年収700万円が維持できるとしても,65歳以降は優良な再就職先という特別事情がなければ年収700万円の維持が困難の場合,男性労働者の学歴別・年齢別の平均賃金を参考にします。平成26年賃金センサスでは,583万1500円です。ⅰ60歳~65歳,ⅱ65歳~に分けて算定を行います。
         ②生活費控除率
          裁判例は,一家の大黒柱生活費控除率を30~40%で認定することが多いのですが,ⅰ被扶養者が1人の場合は40%,ⅱ被扶養者が2人以上の場合は30%で認定する傾向にあるといえます。
    被扶養者が妻のみである場合は,40%です。
     ③就労可能年数によるライプニッツ係数
            就労可能年数は原則として67歳までの年数です。ただし,67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者については,平均余命の2分の1を就労可能年数とします。男性60歳の平均余命は,23.36です(平成26年簡易生命表)。就労可能年数は11年間です。
     ⅰ60歳~65歳
      5年間のライプニッツ係数 4.3295
     ⅱ65歳~71歳
              6年間のライプニッツ係数
      8.3064(11年間のライプニッツ係数)-4.3295(5年間のライプニッツ係数)=3.9769
   以上より,逸失利益は,【ⅰ60歳~65歳①700万円×(1-②0.4)×③4.3295】+【ⅱ65歳~71歳①583万1500円×(1-②0.4)×③3.9769=3209万8675円です。

 

交通死亡事故は賠償額が大きくなるため,弁護士の腕次第で,賠償額に数千万円の違いが生じることがあります。
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