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【コラム】:令和5年年末の交通安全県民運動の実施
年末は,師走特有の慌ただしさから,運転者や自転車利用者等の注意力が散漫となり,交通事故の増加が心配されます。愛知県では,令和5年12月1日~同月10日まで,年末の交通安全県民運動を実施します。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenmin-anzen/koutu-kenminundou.html
運動重点は,
・夕暮れ時と夜間の交通事故防止及び歩行者の安全の確保
・運転者の安全運転意識の向上及び飲酒運転等の根絶
・自転車等のヘルメット着用と交通ルール遵守の徹底
になります。
12月は,忘年会等,飲酒の機会が増えることから飲酒運転による交通事故の増加も懸念されます。
飲酒運転には,「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。
「酒気帯び運転」とは,酒気を帯びて車両等を運転することです。酒気を帯びてとは,通常の健康人の血液中に常時保有されている程度以上にアルコールを保有して車両を運転することで,基準値は,「血液1ミリリットル中のアルコール濃度が0.3mg以上」,または,「呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上」です。飲酒運転の多くは,「酒気帯び運転」となっています。
一方,「酒酔い運転」とは,「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」をいいます。
飲酒運転は,運転している当事者の自損事故だけではなく,他のドライバーや通行人を巻き添えにするような悲惨な事故につながることが多くなります。
運転手が飲酒により気持が大きくなり,スピードの出し過ぎや乱暴な運転になることが多く,事故に巻き込まれた場合,死亡事故につながりやすくなります。
死亡事故は賠償額が大きいですが,飲酒運転の場合はさらに慰謝料の増額が認められる場合もあります。また,飲酒運転の発覚を恐れて,救護活動をせずに加害者が逃亡した場合も,さらに高額の慰謝料が認められる場合があります。
なお,自動車だけではなく自転車や電動キックボードも飲酒運転禁止となります。
飲酒運転を根絶するためには,運転するなら酒を飲まない,酒を飲んだら運転しない,運転する人に酒をすすめない,酒を飲んだ人に運転させないを徹底しすることが大切です。
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,飲酒運転の交通事故の解決実績が豊富にありますので,飲酒運転の被害に遭われたら,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:魔の時間帯の交通死亡事故に注意
秋から冬にかけて,午後5時から7時は交通事故の発生が多く,「魔の時間」と呼ばれています。
愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,平成30年から令和4年までの5年間の10月は,全時間帯に比べ,魔の時間では,歩行者,高齢者,横断中の交通死亡事故が多く発生していることが分かります。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202310point.pdf
また,11月は交通事故死者数が年間で最多となっていますので,引き続き魔の時間の交通事故に注意が必要です。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202311point.pdf
ドライバーは早めの前照灯点灯(10月は16時半が目安です)と,速度を落とした運転を心がけること,歩行者は横断歩道を利用し,横断時は左右の安全確認を行うことが大切です。
歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
自動車と歩行者が衝突した場合,衝突時の速度が時速30kmを超えると歩行者の致死率が急に上昇し,その後も速度が上がれば上がるほど死亡率は上昇するといわれています。
生活道路では制限速度を時速30kmに設け,安全対策を行っている地域も増えてきていますので,速度規制のある道路では速度を遵守し,横断する歩行者に注意しましょう。
なお,過失割合は,おおむね時速15km以上30km未満の速度違反で著しい過失,おおむね時速30km以上の速度違反で重過失となります。横断歩道や交差点の近くでもない場所における横断歩行者と四輪車の事故の基本の過失割合は,歩行者:車=20:80ですので,制限速度30kmの道路で時速60kmで運転していると,重過失となり,過失割合は,歩行者:車=0:100になります。
死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが重要になります。
【コラム】愛知県内の交通事故死者数が100人に達する
愛知県警察によると,令和5年9月11日,愛知県内の今年の交通事故死者数が100人に達しました。昨年に比べ29日早く,愛知県警察では警戒を呼び掛けています。
死者100人のうち,歩行者が38人と最多となっており,次いで四輪車25人,自転車16人,自動二輪13人,原付7人,その他1名となっています。また,年齢別では,65歳以上の高齢者が49人で,約半数となっています。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/jikonippou/documents/koutsuushibouzikonippou230913.pdf
歩行者が被害に遭う交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故や重篤な障害が残る事故につながりやすくなります。
死亡事故や後遺障害が残存した場合,逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)が支払われますが,就労可能年数(67歳)までの年数が長いほど逸失利益は高額となります。
ただし,67歳を超えている方や67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1よりも短くなる被害者については,原則として,平均余命の2分の1の年数となります。
逸失利益は,一般的に,死亡事故や後遺障害の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが大切です。
また,交差点内や交差点付近で歩行者が横断中に事故に遭う場合,歩行者が横断歩道を横断しているかどうかで過失割合が変わってきます。
歩行者は,横断歩道の付近においては,横断歩道によって道路を横断しなければならないとされています。一方,車は,横断歩道により横断している歩行者がある場合は,当該横断歩道の直前で一時停止し,かつ,その通行を妨げないようにしなければならないとされており,横断歩道により道路を横断する歩行者に対しては強い法的保護が与えられています。
また,横断歩道外を横断している場合でも,おおむね横断歩道の端から外側に1mないし2m居ないの横断や,横断歩道が停止車両により閉塞されているときの当該車両の直前・直後の横断は横断歩道による横断と同視される可能性が高いです。
それ以外の場所でおいては,横断歩道の付近(幹線道路であれば横断歩道の端から外側におおむね40mないし50m以内,それ以外の道路では20mないし30m以内)であれば横断歩道通過後なのか横断歩道の手前なのかによって過失割合が変わってきます。
歩行者の事故の場合,事故態様によって過失割合が変わってきますので,ドライブレコーダー映像や事故の現場図を分析し,正確な事故態様を明らかにしたうえで,適正な過失割合で解決することも非常に大切となります。
死亡事故や重篤な障害が残る事故は賠償額が高額となるため,過失割合がたとえ1割の違いであっても,賠償額が大きく変わってきますので,専門的知識と豊富な解決実績のある交通事故に強い弁護士に相談することが重要になります。
【コラム】:お盆時期に交通事故の被害に遭われたら
警察庁によると,令和5年上半期の交通事故交通事故死者数は1182人となっており,昨年より24人多くなっています。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/jiko/R5kamihanki_bunseki.pdf
状態別では、歩行中417人,自動車乗車中402人,二輪車乗車中212人が前年より増加,自転車乗用中143人が前年より減少しています。今年4月から自転車乗車中のヘルメット着用が努力義務となりましたが,自転車乗用中死傷者のヘルメット着用率は前年比で上昇しています。
お盆時期は交通量が増加するため交通事故も多発し,毎年多くの方が交通事故の被害に遭われています。警視庁は,行動制限が緩和されて人の動きが活発化したことが,上半期の事故死者増の背景にあるとみており,今年は例年以上に交通事故が増える恐れがあります。
普段は電車やバス等を利用している方が,混雑を避けるために車を利用するなど,運転が不慣れな人,免許を取得したばかりの人もいますので,すべてのドライバーが事故が発生しないよう注意が必要です。特に,長時間運転をする予定のある方は,時間に余裕を持った計画を立て,適宜休憩をするなど体調管理を併せた安全行動を取ることが大切です。
また,近年は高齢者が被害に遭う事故やあおり運転,自転車による事故も多くなっています。
では,お盆時期に交通事故の被害に遭われたら,どうすればよいでしょうか。
交通死亡事故の場合,お亡くなりになられた方が一家の大黒柱ですと,早急な金銭的サポートが必要になることもあります。
弁護士法人しまかぜ法律事務所では,直接,自賠責に保険金を請求し,まず自賠責の範囲内で保険金を獲得し,最終的に弁護士基準との差額を請求しています。2段階の手続きを行うことで早急な金銭回収が可能となり,ご遺族が生活費でお困りになる危険を回避します。
ご家族が死亡事故に遭われお困りの方は,ぜひ,早期にご相談ください。
【コラム】:7月は四輪車,二輪車の死亡事故が多発
愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,過去5年の四輪車・二輪車の月別死者数は7月が最多となっています。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202307point.pdf
事故類型別でみると,速度超過による単独事故が多くなっています。
また,7月は飲酒運転による死亡事故が増えています。アルコールは,中枢神経系に作用して脳の神経活動を抑制する物質で,運動機能,自制心,動体視力,集中力,認知能力,状況判断力の低下等を生じさせることから,交通事故を起こす危険が極めて高くなります。そのため,飲酒した運転手だけでなく,依頼同乗者,車両提供者,酒類提供者にも重たい罰則・行政処分が科せられます。
過失割合について,速度超過がある場合,おおむね時速15km以上30km未満の速度違反で著しい過失,おおむね時速30km以上で重過失の修正要素が適用されます。
速度違反した車両のドライブレコーダーに速度が表示されている場合もありますが,加害車両のドライブレコーダー映像を提供してもらえないこともあります。その場合は,被害車両のドライブレコーダー映像や事故現場付近の防犯カメラ等を解析し,速度を明らかにできる場合があります。
また,酒気帯び運転は著しい過失,酒酔い運転は重過失の修正要素が適用されます。加害車両の運転手に飲酒の疑いがある場合,警察で検査をしていれば,刑事記録等を取り寄せることで,飲酒の有無を明らかにできる場合があります。
著しい過失の場合は10%,重過失の場合は20%加算修正されます。
過失割合は,物損だけでなく人身にも影響しますので,死亡事故や後遺障害が残存する事故など,賠償額が大きくなればなるほど,過失割合がたとえ1割の違いであっても,受け取れる金額が大きく変わってきます。
弁護士法人しまかぜ法律事務所では,適正な過失割合で事故の解決をしていますので,過失割合でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:「春の交通安全運動」期間中の交通事故死者 愛知県がワースト
警察庁によると,「春の全国交通安全運動」期間中(令和5年5月11日から20日)の交通事故死者数は65人でした。そのうち,愛知県は8人で,全国でワーストとなりました。
死者の状態別では自動車乗車中が16人,二輪車乗車中が8人,自転車乗車中が8人,歩行中が33人でした。年齢別では65歳以上が41人となっており,6割を超えています。
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20230522harukou.html
高齢者が交通死亡事故の被害に遭われた場合,損害賠償を請求する際に問題となるのが,死亡逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)です。
高齢者といっても,仕事をされている方,家事従事者の方,年金を受給して生活されている方など様々な方がいますので,何を基準に死亡逸失利益を算定するかが争点になることが多くあります。
死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。
なお,定年退職直後や生活保護を受給していた等の理由で事故当時は無職であっても,再就職の意欲と蓋然性があれば,死亡逸失利益を請求することができる場合もあります。
また,交通事故で一命を取りとめたものの,一定期間,入院・通院した後に亡くなられる場合もあります。このように,入院・通院後に亡くなられた場合,治療費,葬儀費用,死亡逸失利益,慰謝料のほかに,入院・通院に伴う慰謝料等も当然に請求することができます。
なお,治療の結果,後遺障害が残り,その後事故とは別の理由で亡くなったとしても,死亡の事実は考慮せずに,事故後生存している場合と同様に後遺障害逸失利益は請求できます。
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,高齢者の交通死亡事故の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:連休中の交通事故にご注意ください
愛知県警察が作成している「交通事故防止のPOINT」によると,平成30年から令和4年までの5年間の大型連休中の交通事故の死者数は20人となっています。
年齢別で見ると高齢者が70%となっています。事故類型別では横断中及び単独事故が25%と高くなっており,単独事故では規制速度以上が6割となっています。通行目的では,買い物が25%と最多で,通勤,ドライブ等が15%と続いています。
連休中は,帰省,レジャー,買い物等で外出する機会が増えますので,出かける際は無理のない運転計画を立て,スピードを控えるなど安全運転を心がけることが大切です。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/202305point.pdf
では,もし連休中に交通事故の被害に遭ったら,どうすれば良いでしょうか。
交通死亡事故の場合,お亡くなりになられた方が一家の大黒柱ですと,早急な金銭的サポートが必要になることもあります。
弁護士法人しまかぜ法律事務所では,直接,自賠責に保険金を請求し,まず自賠責の範囲内で保険金を獲得し,最終的に弁護士基準との差額を請求しています。2段階の手続きを行うことで早急な金銭回収が可能となり,ご遺族が生活費等でお困りになる危険を回避します。
ご家族が死亡事故に遭われお困りの方は,ぜひ,早期にご相談ください。
【コラム】:自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化
改正道路交通法の施行により,令和5年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されます。
愛知県では既に2021年10月1日から自転車乗車用ヘルメットの着用が努力義務となっていますが,今後は,全国で努力義務化され,自転車の安全利用のための取り組みが強化されます。
愛知県内の令和4年度の自転車の死者は20人ですが,全員がヘルメット非着用となっており,ヘルメットを着用しないと死亡につながりやすいことが分かります。
https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jiko/koutsu-s/documents/kakuteisuu202212ver2.pdf
自転車による交通事故は,衝撃が生身に伝わるということもあり,死亡事故につながりやすくなります。死亡に至らなくても,頭部を損傷することで,遷延性意識障害や高次脳機能障害となることもあります。
遷延性意識障害とは,意識不明のまま寝たきりになっている状態のことで,一般的に植物状態といわれています。事故前のように,会話をしたり,一緒に食事をしたり,笑顔を交わすことさえもできなくなるため,家族の深い悲しみは想像するに余りあります。
遷延性意識障害になると,常に身守りや介護が必要になりますので,遷延性意識障害の患者が暮らしやすい環境を整えるには,適正な後遺症の等級認定を受け,適正な賠償金を得ることが大切です。
賠償項目としては,治療費,傷害慰謝料(入院慰謝料),付添看護費,後遺症慰謝料,逸失利益の他に,将来の介護費用,近親者の後遺症慰謝料,家屋のリフォーム代が認められます。
高次脳機能障害とは,脳が損傷することで,①記憶障害(覚えられない,思い出せない,すぐに忘れる),②注意障害(気が散りやすい,集中できない),③遂行機能障害(手順良く作業を行うことができない),④人格障害(怒りっぽくなる,疑いやすくなる),⑤コミュニケーション障害が生じることです。
高次脳機能障害は外見上異常がないため,周囲から理解されることが難しく,被害者や家族が精神的にも追い込まれることが少なくありません。
自賠責では,症状に応じて1級~9級が認定され,介護が必要となる1級,2級では,遷延性意識障害と同じように,将来の介護費用や家屋のリフォーム代が認められます。
このように,遷延性意識障害や高次脳機能障害となると,被害者のみならず介護を行う家族の生活が,事故前とでは一変することになります。
自転車利用時にヘルメットを着用することで,頭部への衝撃を減らすことができますので,ご自身や大切な人を守るため,安全基準を満たす自転車乗車用ヘルメットを着用しましょう。
なお,名古屋市では,市内在住の全年齢の方を対象に,自転車乗車用ヘルメットの購入の補助をしています。他の自治体でも同様の補助を行っている場合がありますので,一度ご確認ください。
https://www.city.nagoya.jp/sportsshimin/page/0000162565.html
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,自転車の交通死亡事故や遷延性意識障害,高次脳機能障害の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】高齢者運転の死亡事故の割合が増加
警察庁によると,令和4年に自動車やバイクで75歳以上の運転者が起こした死亡事故は,前年に比べ33件増の379件で,死亡事故全体に占める割合が過去最高の16.7%となりました。
1947~49年生まれの「団塊の世代」が75歳になり始め,75歳以上の免許人口が増えた影響があると考えられています。
事故の原因は,ハンドル操作の誤りやブレーキとアクセルの踏み間違いなどの操作ミスが30.1%と多くなっています。事故の類型別では,電柱や標識などへの衝突が最も多く,人が横断中,道路外にはみ出すケースが続いています。
このように,高齢者の交通事故の割合が増えている中,もし,交通事故の被害に遭った際に,加害者が高齢者でかつ認知症だった場合,賠償はどうなるのでしょうか。
加害者が認知症であっても,自賠責保険や任意保険に加入していれば,認知症でない方と同じように,自賠責保険や任意保険から保険金を受け取ることができます。
ただし,認知症の加害者が無保険の場合,認知症の程度により責任能力がないと判断されれば,民法上の賠償責任は負いません。その場合は,自動車損害賠償保障法の範囲で,自動車の所有者が本人であれば本人が,所有者が家族であれば運行供用者として家族が賠償責任を負うことになります。
また,認知症の程度によっては,事故状況の確認が難しく,事故の目撃者がいない場合は,示談による解決が難しくなることもあります。適正な過失割合で事故の解決をするには,ドライブレコーダーや事故の現場図を分析し,正確な事故態様を明らかにできる,交通事故に強い弁護士に相談することが大切です。
高齢者が交通死亡事故の被害に遭われた場合,損害賠償を請求する際に問題となるのが,死亡逸失利益(生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のこと)です。
高齢者といっても,仕事をされている方,家事従事者の方,年金を受給して生活されている方など様々な方がいますので,何を基準に死亡逸失利益を算定するかが争点になることが多くあります。
死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で算定することが非常に重要となります。
なお,定年退職直後や生活保護を受給していた等の理由で事故当時は無職であっても,再就職の意欲と蓋然性があれば,死亡逸失利益を請求することができる場合もあります。
また,交通事故で一命を取りとめたものの,一定期間,入院・通院した後に亡くなられる場合もあります。このように,入院・通院後に亡くなられた場合,治療費,葬儀費用,死亡逸失利益,慰謝料のほかに,入院・通院に伴う慰謝料等も当然に請求することができます。
なお,治療の結果,後遺障害が残り,その後事故とは別の理由で亡くなったとしても,死亡の事実は考慮せずに,事故後生存している場合と同様に後遺障害逸失利益は請求できます。
弁護士法人しまかぜ法律事務所は,高齢者の交通死亡事故の解決実績が豊富にありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。
【コラム】:消極損害 死亡逸失利益
交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。
消極損害 死亡による逸失利益
(1)算定方法
死亡による逸失利益とは,生きていれば得られるはずであった収入など,交通死亡事故によって失われた利益のことで,以下の計算式で算定します。
<死亡逸失利益の計算式>
逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数によるライプニッツ係数
ア 基礎収入
逸失利益算定の基礎となる収入は,原則として事故前の現実収入ですが,将来,現実収入額以上の収入を得られる立証があれば,その金額を基礎収入とします。
なお,現実収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても,将来,平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすることができます。
家事従事者の方は,死亡した年の賃金センサスの女子全年齢平均賃金(令和2年の統計で381万9200円)で算定します。
イ 生活費控除率
利益が失われると同時に,もし生きていれば支出するはずだった生活費も支払わなくてよくなっているため,死亡逸失利益を算定するには,将来支払うはずだった生活費を控除します。
被害者に被扶養者がいる場合は年収の35%,被扶養者がいない場合は年収の50%です。女性(主婦,独身,幼児等含む)は,30%です。
ウ 労働能力喪失期間
就労可能年数は,原則として67歳までの期間です。
ライプニッツ係数は,就労可能年数に応じて決まっています。
(2)計算例
※令和2年4月1日以降に発生した事故を想定し,利率は年3%とします。
① 有職者または就労可能者
年齢30歳の主婦の死亡逸失利益の例
381万9200円×(1-0.3)×22.1672=592万62679円
② 18歳未満の未就労者
3歳男子の死亡逸失利益の例
545万9500円×(1-0.5)×16.3686=4468万2185円
※ライプニッツ係数は,67年-3年=64年のライプニッツ係数28.4065から,18年-3年=15年のライプニッツ係数11.9379を控除したものです。
愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,3年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の年齢や職業等によって,それぞれ変わってきます。
特に死亡逸失利益は,賠償項目の中でもっとも高額となりますので,適正な算定方法で請求することが大切になります。
保険会社から提示される金額は上記算定方法の金額を大きく下回りますので,適正な死亡逸失利益での解決実績が豊富な,弁護士法人しまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。