【コラム】:令和元年版「交通安全白書」高齢者の交通死亡事故の特徴

2019-06-28

 政府は令和元年6月21日の閣議で,令和元年版「交通安全白書」を決定しました。
 (https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r01kou_haku/index_zenbun_pdf.html

 平成30年の交通事故死者のうち,65歳以上の高齢者は55.7%となっていますが,歩行中死者数に占める高齢者の割合は71.5%と更に高齢者の割合が多くなっています。今後も一層高齢化が進展することを考えると,高齢者の交通安全は,歩行者としても運転者としても重要な課題となっています。
 高齢歩行者の死亡事故では,死亡した歩行者の約6割に法令違反があり,そのうち横断違反が33%と他の年代の16%に比べ多くなっています。
 運転中の死亡事故では,免許人口10万人当たり死亡事故件数を年齢層別に見ると,75歳以上の高齢運転者については75歳未満の年齢層に比べて約2.4倍となっています。死亡事故を類型別にみると,車両単独による事故が多く,具体的には,工作物衝突や路外逸脱が多くなっています。また,人的要因をみると,操作不適による事故が最も多く,そのうち,ブレーキとアクセルの踏み間違い事故は,75歳以上が5.4%に対し75歳未満は1.1%と,75歳以上の高齢者が約5倍多くなっています。

 平成4年の世論調査において,「あなたは,自分で運転できるのは何歳ぐらいまでだと思いますか」という質問に対し,「65歳ぐらいまで」と回答した者は46.4%,「75歳ぐらいまで」と回答した者は38.9%となっています。平成の間に平均寿命は概ね5年延びており,今後も運転を続ける高齢者の方が多くいらっしゃると思いますが,交通安全白書の内容や昨今の交通事故の報道を受け止め,安全運転を心がけていただきたいです。

 また,名古屋市では,高齢者の運転免許自主返納促進事業を実施しています。
 (http://www.city.nagoya.jp/shiminkeizai/page/0000104113.html
 名古屋市内在住で,昭和25年4月1日以前に生まれた方は,平成31年4月1日から令和2年3月20日までに運転免許を自主返納をするとマナカチャージ券5000円分が交付されます。
 その他の自治体でも運転免許自主返納の取り組みがされていることがありますので,一度お住まいの自治体へご確認ください。

 

 このように,高齢者の交通事故の割合が増えている中,もし,交通事故の被害に遭った際に,加害者が高齢者でかつ認知症だった場合,賠償はどうなるのでしょうか。
 加害者が認知症であっても,自賠責保険や任意保険に加入していれば,認知症でない方と同じように,自賠責保険や任意保険から保険金を受け取ることができます。
 ただし,認知症の加害者が無保険の場合,認知症の程度により責任能力がないと判断されれば,民法上の賠償責任は負いません。その場合は,自動車損害賠償保障法の範囲で,自動車の所有者が本人であれば本人が,所有者が家族であれば運行供用者として家族が賠償責任を負うことになります。

 また,認知症の程度によっては,事故状況の確認が難しく,事故の目撃者がいない場合は,示談による解決が難しくなることもあります。
 しまかぜ法律事務所では,ドライブレコーダーや事故の現場図を分析したり,正確な事故態様を明らかにし,適正な過失割合で事故の解決をしています。
 しまかぜ法律事務所は,高齢者の交通事故の解決実績が豊富にありますので,高齢者の交通事故でお困りの方は,ぜひ,ご相談ください。