【コラム】:死亡逸失利益について(会社役員の算定方法)

2016-06-11

死亡逸失利益は,①基礎収入×(1-②生活費控除率)×③就労可能年数によるライプニッツ係数で算定しますが,①基礎収入は,被害者の属性に応じて算定方法が様々ですので,属性に応じて説明を連載しています。

第3回は,会社役員です。

会社役員の基礎収入で問題となることが多いのは, 算定方法です。

 
役員報酬には,Ⅰ労務対価部分と,Ⅱ利益配当部分の性格があります。
会社役員が死亡した場合は,Ⅰ労務対価部分だけでなく,Ⅱ利益配当部分も失うことから,役員報酬全額が基礎収入となりそうですが,多くの裁判例は,Ⅰ労務対価部分のみ基礎収入として認定しています(最判昭43・8・2判時530・35)。
もっとも,小規模会社や,サラリーマン役員など,役員報酬の性格が,Ⅰ労務対価が100%であると認定される場合は,役員報酬全額が基礎収入となります。
問題は,役員報酬の,どの程度が労務対価部分といえるかです。

 

Ⅰ労務対価部分は,次の項目を総合考慮して認定されます。
ⅰ会社規模
 大規模であれば,労務対価の性格は弱くなります
ⅱ会社の利益状況
 会社役員が死亡したことで,会社がどの程度減収したかです。減収が大きければ,会社役員の労務の程度が大きいと判断されます。
ⅲ役員の地位・職務内容
 労務対価として認定できる職務を行っているかです。
ⅳ年齢
 労務を想定できないほどの高齢ではないか。同じ年齢の給与所得者はどの程度の給与を得ているかも参考にします。
ⅴ役員報酬の額
 同じ年齢の給与所得者とあまりにも金額に差異がある場合,利益配当部分の性格が強いと言えます。
ⅵ他の役員の職務内容と報酬額の比較
 他の役員より高額であれば,利益配当部分の性格が強くなります。
ⅶ他の従業員の給与額の比較
 従業員は労務対価として給与を得ているため参考になります。

 

会社役員の基礎収入を算定するために必要な資料は,次のとおりです。
ⅰ法人事業概況説明書
  会社規模を把握するためです。
ⅱ決算報告書
 会社の利益状況を把握するためです。
ⅲ月次損益計算書
 会社の利益状況を把握するためです。

 

死亡逸失利益は,一般的に,死亡事故の賠償項目でもっとも高額となります。
しまかぜ法律事務所では,役員報酬の労務対価部分を適正に算定するために必要な資料を,被害者ごとに個別に考えてご案内しています。
適正な賠償額を獲得するためにも,豊富な知識と実績を備えたしまかぜ法律事務所に,ぜひ,ご相談ください。