【コラム】:消極損害その1 休業損害(2)

2021-08-27

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

 

 

消極損害その1 休業損害
1.有職者
(2)事業所得者
現実の収入減があった場合に認められます。
基本的な算定方法は,基礎収入(事故前年の事業所得金額÷365日)×休業日数です。
事業所得金額に事業専従者控除額or青色申告特別控除額を加算する,寄与率を考慮する,完全休業の場合は固定費を加算する等,事故に遭われた方の状況によって,計算方法が変わります。
休業損害を請求するには確定申告書の控えを提出する必要がありますが,課税証明書等,事故前年の所得が証明できる資料で代用することもできます。
ア 認定例
右肩痛,右手の痺れがある理容師,右肩痛の左官職人など,傷害を負った部位が業務に不可欠な場合,長期間の休業が認められやすい傾向にあります。
映像コンテンツの企画,演出等の業務を行っていた事業所得者につき,事故により締め切りまでに出来ず契約を解除された場合,得られなかった演出料,著作権料,ロケハン等の費用が認められた事例があります。
一方,開業から一貫して大幅な赤字傾向にある場合,休業期間中の所得の減少は,事業の経済効率の悪さ,社会・経済状況の変動及び同業社との競合等による受注減少という可能性も否定できないとし,全額認められない事例もあります。

イ 申告所得を超える収入を認めた事例
修正申告した場合,過少申告していて確定申告額以上の所得があることが証明できる場合は,申告所得を超える収入が認められることもあります。
また,確定申告をしていない場合,過少申告で実際の所得額が証明できない場合は,借入金の返済状況や扶養家族の人数から,賃金センサスを基礎とする事例もあります。

ウ 減収はないが休業損害を認めた事例
妻や子などの協力によって減収がない場合,営業活動の効果により所得が増加した場合,事故前に受注した仕事をしていた場合等,減収がなくても休業損害が認められます。
また,年ごとの所得の変動が大きい業種で,事故後に減収が生じていないのが収入の喪失がなかったからなのか,景気の動向等を含むその他の要因によるものであるかを的確に認定することは困難だとして,一部認められた事例があります。

エ 固定経費に関する事例
事故により事業を完全休業したとしても,家賃,保険料,減価償却費などの負担を免れることはできません。これらの固定経費は,休業損害として加算して請求できます。
固定経費として認められたものとして,租税公課,損害保険料,利子割引率,地代家賃,諸経費,リース料,減価償却費,修繕費,管理緒費,諸会費,水道光熱費,通信費,研修費,販売促進費,会社控除,支払手数料などがあります。
接待交際費は,冠婚葬祭費,慶弔費,お見舞い金,お歳暮・中元の贈り物は固定経費と認められますが,飲食を伴う接待交際費は認められません。
また,事業廃止届を提出するなどして事業を廃止することが確定した以降は,経費を支出する理由はないとして,申告所得額を基礎とします。

オ 事業再開後の損害に関する事例
そば店経営者につき,出前に売上の7割を依存していたことから,休業期間経過後の売上減少による損害として100万円が認められました。
歯科医師につき,診療再開後も休診の影響から患者が減少し売上が減少したとして,診療再開後3ヶ月間の売上減少の8割が損害として認められました。
飲食店経営者につき,店舗再開後症状固定までの期間について,認定された後遺障害等級の喪失率を乗じた金額が認められました。

カ 廃業による損害に関する事例
事故後廃業した美容院経営者につき,事故に遭わなければ経営を継続していたとして,事故から約2年前の開業時に支出した費用の約5割が認められました。

キ 代替労働力に関する事例
事故により自身が就労できないために代替労働者を雇い,その人に給料や賃金を支払った場合,その支出分を被害者本人の休業損害として請求できます。
新聞配達員,一人で開業している歯科医師,内科開業医,ブリーダー,水道設備業者等で認められた事例があります。

 

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 特に休業損害は,支払われないことで生活が困窮する場合もありますので,ひとりひとりの事情を詳しくお伺いして,適正な金額を請求することが大切です。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,様々な休業損害の請求事例がありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。