【コラム】:消極損害その1 休業損害(6)

2021-10-04

 交通事故の被害に遭い,加害者へ請求できる損害賠償には,積極損害,消極損害,慰謝料があります。
 積極損害とは,事故により被害者が実際に支払った費用のことで,治療費や通院交通費などです。消極損害は,事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益のことで,休業損害や逸失利益です。慰謝料は,事故に遭うことで受ける肉体的・精神的な苦痛に対する賠償金です。
 請求できる内容や注意点など,詳しくご紹介します。

消極損害その1 休業損害
3.無職者
(2)学生,生徒等
原則として認められませんが,アルバイト等,収入があれば認められます。
また,就職遅れによる損害は,裁判では多く認められています。基礎収入は,就職が内定している場合はその就職先での給与額,内定していない場合は賃金センサスを用いて算出されます。

・ 高校3年生につき,事故に遭わなければ卒業後に就労したと認められるとして,症状固定まで就労不可能であったとして,賃金センサス高卒年齢別平均を基礎に,年度ごとに休業損害を算定した。なお,症状固定日までの間に結婚しているが,家事労働を含めて算定している。
・ 短大生につき,事故後就職活動が行えなかったことなどから1年間の就職の遅れが生じた場合に,賃金センサス女性短大卒20歳から24歳平均を基礎に,1年分を認めた。
・ 大学生につき,事故により留年し1年半就職遅れが生じた場合に,賃金センサス男性大卒20歳から24歳平均を基礎に,就職遅れの期間分認められた。
・ 大学浪人生につき,事故の翌年大学に入学した場合に,事故がなければ事故の年に入学していたものと認められるとして,賃金センサス男性大卒20歳から24歳平均を基礎に,1年分を認めた。
・ 着付けの免許をとるため専門学校へ通いながら店員アルバイトをしていた被害者につき,事故がなければ免許を取れたと認められるが,他方アルバイトの収入が月額7万円であったことから,賃金センサス女性年齢別平均の8割を基礎に29ヶ月分認めた。
・ 就職が内定していた修士課程後期在学生につき,事故により就職内定が取り消され,症状固定まで就業できなかった場合に,就職予定日から症状固定まで2年6ヶ月余の間,就職内定先からの回答による給与推定額を基礎に認めた。
・ 高校3年生につき,事故に遭わなければ大学に入学・卒業していた蓋然性が高いとし,賃金センサス女性大卒20歳から24歳平均を基礎に,大学卒業年の4月1日から症状固定までを認めた。
・ 大学生につき,大学3年生になったばかりの時期で就職活動のために直ちにバイトを自粛しなければならない状況にはなかった等として,事故前日までの102日間の実収入を基礎に,症状固定まで認めた。
・ 専門学校生につき,事故がなければ翌々年4月から就労開始予定時から症状固定まで約40月分を認めた。
・ 高校生につき,事故当時のアルバイト収入及び事故後進学した大学の同級生のアルバイト収入を参考に,月額6万2000円を基礎に,症状固定まで認めた。

 愛知県では,愛知県警の取り締まり強化により,2年連続で交通事故死者数全国ワーストを脱却しましたが,未だ多くのご遺族が交通死亡事故の被害で苦しんでいます。
 交通事故の被害に遭い,加害者に請求できる内容は,被害に遭われた方の症状や職業等によって,それぞれ変わってきます。
 弁護士法人しまかぜ法律事務所では,学生のアルバイト収入や,事故により就職が遅れた場合の請求事例も多数ありますので,適正な賠償額で解決するためにも,ぜひ,ご相談ください。